2009年11月19日

真剣勝負で負けた話

古本屋業界の用語で「筋が良い」というのがあって、結局は売れ筋という事ですが、古本の買い取りで筋の良い本棚に出会うのはなかなか難しい。

『日本(世界)文学全集』はかなりの数が出回っているので、買い取りの電話はいやと言うほどあります。
しかし、文学全集でも例外はあるもので、筑摩書房の『明治文学全集全100巻』は供給過多になりつつはあるけど、全100巻揃いだったら今でも高い値のする相場になっています。
この全集は「第100巻 別巻総目録」が白眉で、1冊だけでも1万5千円つけても問題はない。以前、東京の古本屋から(古書組合加入店ではなかったので、素性も分からない店だが)「お前の値段は1桁間違っている1.500円で買う」と、古本屋でも知らない輩がいた。
なぜ、総合目録なのに値が張るのか。古本の値段には根拠がある。ネットという便利なものがあるから調べて見たらいいかがでしょうか。(答えが出て来るかな)

鹿児島で明治文学全集に出会ったのはまだ1回だけです。

真剣勝負で負けた話

さてさて、筋の良い本が、1万冊以上もある蔵書家の買い取り話。

本棚が、幅90センチ 高さ180センチだったら200~300冊ほど収まると古本屋は考えますが、この蔵書家は約70本の本棚だった。ひょっとしたら2万冊あったかもしれない。
そして、京都の古書店が鹿児島に来て見積りをするので、お前も見積りを出してくれという事だった。
その古書店は、知る人ぞ知る有名古書店だった。

本棚は「日本の植民地政策」を中心にした全くもっての学術書である。これだけテーマのはっきりした本棚にはまずお目にかかれないので、京都の古書店も丸1日半を費やし、さらに後日提出だったから難しい見積だったと思う。(実は、本に朱線引が1割ほどあったので金額を引き算しなければならなくなり、私もややこしかった)

次に、私の出番になった。都市圏の古本市場に出しても何ら遜色のない本ばかりである。古本屋の癖で筋の良さそうな本が置いてあるところから始めた。予想は出来ていたが、本棚10本であっという間に100万円になった。

さらに、200万円も超えていく中、私の弱点である貯金残高が気になってくる。
結局、「数年かかりますが、委託販売(本を預かり、販売したら支払いする方法)でお願いします」と条件をお願いして見積を続けた。

真剣勝負で負けた話

後日、見積以来された方が「蔵書家の温情で、本は京都と鹿児島と半分ずつ分ける事になりました。で見積については、20万円の差であんたの勝ちだったよ」と。
結局、それは運賃の差なのである。都市圏の市場では、恒に運賃を上乗せして入札するので京都への運賃とすぐ分かった。

ただ、見積については、全国に名だたる古書店と考え方が間違ってなかった事だけが収穫だった。古書業界語で「水は低きに流れるが、本は高き(お金のある方)に流れる」とある、みすみす鹿児島から良書を持って行かれたのだから完敗である。情けない気持ちで一杯になった。早く私の弱点をなくしたいのだが、これが手強いのですよ。


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Posted by Kosho Liset at 18:09 │古本屋の視線

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